
願わくば、いつまでもこのままで
第10章 後悔
夜7時頃の病院はまだ人も多く
運ばれる兄貴が人目につくのが嫌だった。
でも
こんなときにこんなこと考えていた
自分自身の方がよっぽど嫌だ
兄貴の身体が運ばれて行く。
何人かの医師と一緒に
手術室に入っていくと
"手術中"の文字が赤く光る。
兄貴を見送り
俺はそばの長い弾力のある椅子に座り
「ふう」と息をつく。
自分でも変だと思うほど
俺は冷静でいた
だが比奈ちゃんは
未だ兄貴の姿が見えているように
手術室の扉を虚ろな目で見つめていた。
涙の跡が白い肌に映えた。
