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願わくば、いつまでもこのままで

第11章 邪魔者が一人





ははっと、和君がいきなり笑いだした。



「どうしたの?」




私は林檎が刺さったフォークを和君に向けたまま

首を傾げる。




久しぶりに素直に笑った和君を見た気がした

事故以来じゃない


もう少し前

もうちょっと前から


いつからそんな笑顔を見ていなかったんだろう



今の今まで気づかなかった……




「これだよ、これ」



和君は手の代わりに顎でそれをさした。



「林檎がどうしたの?」


フォークに刺さった林檎を
くるりと反転させ見てみる。


皮が林檎の耳になっていて

そして
目のように丸が2つ皮がくりぬいてあり
動物のように口の形で果物ナイフで切りこみが入っていた。




「ああ、これね」



そう

びくびくしている心を落ち着かせようと少し遊んでみたものだ



「ちょっとびっくりして
 可愛くて笑っちゃった」


それからまた彼はクスクスと

両手が自由だったら口元とお腹を抑えていただろうと思わせる

クスクス笑った。




私が和君と一緒に笑ってもいいのだろうか


そんな想いが頭をよぎる。


でも
不自然に笑顔を抑えるのもどうかと思い



自然に

和君につられて口角をあげた。




「このうさぎさんは
 私の自信作」



にっこり笑った私を

和君は緩やかな微笑みで受け止めてくれた。



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