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願わくば、いつまでもこのままで

第11章 邪魔者が一人



空になったお皿とフォークを洗う。



手を洗いタオルで拭き

ベッドのそばで椅子に座った。



満足そうに口元を緩めて目を閉じた和君がそこにいる。




もしかして


寝ちゃった?




手を伸ばし

少し長くなった彼の前髪に触れた。




「あっ……」



黒い眼が私に向く。


伸ばした手は素早くひっこめた。



「寝てたかと思った」



私を見つめるくせに
和君は返事をしない。


私の言葉は

独り言のように宙に浮き
ふわふわ漂い
窓から入る冷えた空気に溶け消えた。



やっぱり寒い


もう11月なんだから




「俺たち夫婦だな」


和君はどこを見るでもなく天井の辺りに目を向けたまま

ふいに口を開いた。



「え……?」


「事故の日まではさ
 最近なかなか休みがなかったし
 仕事ない日でも
 俺が疲れて寝てばっかだったし
 喋らなくても
 一緒にいて林檎食べて
 2人で笑って……
 おかしいことだけど
 こういうの久しぶりだったな」


「なによ……変なの」




冗談をとばすように

中途半端にだが笑ってみせる。




だが和君は笑いもせず

表情が
読めない




「そうだね」と

同意したほうがよかったのかな





わからない



わからない





変な


和君



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