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願わくば、いつまでもこのままで

第11章 邪魔者が一人




陽はベッドを通り過ぎ

今日も開いていた窓を閉める。




風の音が止む。








静寂









妙に静かな病室の中


緊張で喉が閉まる感覚

陽は唾を呑み込む音さえ躊躇した。




「……で、陽。
お前は何が言いたいんだ?
まさか今の留守電ごときがお前を怯えさせているとでも?」




そんなことないよな

とでも言うように
和斗の口元に薄く笑みが浮かぶ。



笑わない目は

目の前の相手を離さない。






陽は張り詰めた空気に息を飲む。
何かを覚悟したかのように。


携帯をしまうと

深く息を吸い、そして吐いた。





「留守電ごときだって?
あれは脅しに他ならないだろ」



気を落ち着かせるように

笑ってみるが
引きつっている。



「なんで俺への話を
比奈ちゃんにするんだよ」



「自分が一番よくわかってるだろ?
それとも、こんな屈辱的なことを俺に言わせるのか…?」





冷静に見えるその顔からはわからないが

その鋭い怪我人の眼光に

弟は見事に気圧された。








このあと

たった1人の身内である兄の

激情を

彼は

知ることになる







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