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願わくば、いつまでもこのままで

第11章 邪魔者が一人


唖然としていた。



言葉も出なかった。








「っ……」



「……」




息をのみ


陽は真上にいる兄を見つめる。









誰だ


この男は




弟の知る「兄」は


こんな激情に駆られる人ではなく




笑顔で明るくて冷静で



こんな風に




内面をもろに外に出す人ではなかった




はずだ






「何が、片思いだよ……
 お前は
 比奈をみてたんじゃないのかよ
 ふざけるな……!」



「は……なん、だよ」



「片思いだったらよかったんだ
 それで済むと思ってたんだ!
 じゃなきゃ、
 何のためにここまで……」



「おい、兄貴……?」




意味もわからず

独りで言葉を連ねる兄貴を前に陽は体を起こそうとする。




だが


和斗は見逃さなかった。




弟の胸ぐらをつかみ


床に押し付ける。






「なんでいつもそうやって
 中途半端にかき乱して!
 いつも、いつも……!!」



「なんだよ……グ…ッ……いつも、って」




彼の視線はいっそう強く鋭く射るように相手を見る。



痛くて

痛くて


刃物で切られるかのようで


陽の背には水がたまる。




「俺が知らないとでも思っていたか?お前の気持を」



「……え」



「気づいていないとでも思っていたのか?
 兄を上手く騙せていたと勘違いしてるんだろ」




無意識に

陽の眼は険しくなる。




「そんなわけないだろ
 俺はお前の兄貴だぞ」



「なんの、ことだよ」



和斗は胸ぐらを持った腕をあげ、陽をぎりぎりまで引き寄せた。





「双子でもないし
 ただの兄弟がおかしいよな
 多分生まれたときからだろ
 俺たちが好きになるのは決まって同じ女だった」



「兄貴っ……!!」




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