テキストサイズ

願わくば、いつまでもこのままで

第8章 変化





佐倉田弥生を知ったのは


去年の春




園田に言われ梶木に連れられて見た

ミスコンのときだった。





最後の2人に残った佐倉田と園田


「優勝は…………


園田恵美さんです!!」


当然とでもいうような顔をして賞状と小さなトロフィーを貰う園田を横目で睨んでいたのを憶えている。




それを見て

ああ、そういう奴なんだな

と印象付いた。









そんな佐倉田に告白されたのは
夏の終わりの8月末



「泉陽くん
あたしあなたのことが好きなんです!
だから、付き合ってほしいなっ」



大学の食堂で蕎麦を食べている最中いきなり言われた。

横には園田も梶木もいたし
食堂には学生がいっぱいいた。

そんな中大声でちゃめっ気たっぷり言われてわかった。


佐倉田弥生は相当な自信家


だからわざわざ人目のつくところで言ってきた。



もちろん突然の告白のせいで
食堂内はざわざわとうるさくなる。

梶木はそれでも蕎麦を食べる俺をどつく。

俺は面倒に思いながら口から箸を離して佐倉田へ顔を向ける。
佐倉田はにこにこして俺を待っていた。


「泉陽くん、私と付き合ってっ」


「嫌だ」


佐倉田が硬直した。

食堂内も一気に静まりかえっている。


「……ごめんね、よく聴こえなかったな」


「だから、嫌だって言ったんだよ。
お前とは付き合わない」



それだけ言うと俺はまた蕎麦を食べ始める。

食堂内はまた騒ぎ始めた。


「あの佐倉田弥生が振られた…」

「…人前で自信たっぷり言っといて、恥ずかしい…」



佐倉田は屈辱で顔を歪めると食堂を飛び出していった。

そのとき俺は隣で園田がほっと息をついていたことに気がつかなかったわけだが。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ