
あなたの為に背伸びして。
第1章 冷たくされるのは嫌い。
しばらく、見つめ合った。いつもニコニコしてた雅哉の顔は、眉間にシワが寄って男らしい顔になって。
私の心臓は何故か暴れてて。
雅哉とマキの姿がダブって見えた気がした。
頬に何か感じる。それが髪を撫で、顎に下りてきて漸くそれが雅哉の右手であるとわかった。
顎を軽く指で上げられ、固定される。雅哉の整った顔が徐々に距離を詰めてきた。
何故か抵抗できなかった。
多分それは、雅哉がマキと被って見えたから。
キスくらいなら、大丈夫って。
唇に、雅哉の吐息がかかる。
僅かに開いた口をぐっとつむると、雅哉の表情が緩んだ。
「何、マジになってんの」
「え…」
両手が解放される。しかし掴まれた感覚が残ってしばらく指一本動かせずにいた。
「他人の女を取るなんて、アホらしい真似はしないわよ。それに、」
乱れた服を直しながら雅哉が笑う。
「アタシは、オカマなんだから」
