
あなたの為に背伸びして。
第1章 冷たくされるのは嫌い。
実家に帰るよ、といった内容の返事を返し、私は身体の力を抜いた。狭いベッドギリギリまで四肢を伸ばし、息をつく。
僅かに瞼が重く感じる。身体も何だか怠い。ダメだ、今寝てしまっては学校に行けなくなる。
と、思いつつ私は目を閉じた。半ば休んでしまおうという気持ちがあった。
つけっぱなしにしていたテレビからは目覚めの挨拶が飛び交う。ベタなクリスマスソングも。
はぁ…憂鬱。
クリスマスなんて、無くなれ。
テレビに背を向けるように寝返った。
それから、何分経っただろう。うとうと微睡んでいたときに、陽気な音楽が私の睡眠を妨げた。
無視をするつもりだった。こんな朝から電話なんて、非常識だ。しかし音楽は鳴り止まず、やっと鳴り止んだと思えば、また鳴り出した。
数回続いて、漸く私はケータイに手を伸ばした。
「…もしもし」
「おっはよ、寝てた?」
私とは正反対の、元気なハスキーボイスが耳に飛び込んできた。イラッとするが私は冷静を装うと
「いや、寝てない」
「また徹夜?」
「さぁね」
電話の主…倉沢雅哉は相変わらずのオネェ口調でダラダラ説教を始めた。
「あんたね、徹夜は美容の天敵なのわかってんの?」
「はい」
「それにそれで学校休むんでしょ?眠いとか何とか言って!」
「おっしゃる通りです」
