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女剣士のお悩み事情

第2章 追想

手紙にはまだまだ、少女の心がつづられていたが、俺にはもう読めなかった。

視界が、定まらない。
目頭が熱くなり、ぼろぼろと液体が垂れた。膝の上、ズボンの上に染みが広がる。






おかしい。何で涙が出る。あの人に叱られていないのに。ただ手紙を読んだだけなのに。


誰にも届かない手紙。

少女が死人にあてた手紙。

子が親にあてた手紙。

そして・・・・親が子に託した写真。

1枚目の写真には、若い2組の夫婦と、産まれて間もない赤子、そしてあの女医が写っていた。
涙がとまらない。どうしてそこに居る。



宿の入り口、親父の仕事場には小さな肖像画がある。


俺の母。俺の記憶にない人物。

写真の中に、記憶されている。

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