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女剣士のお悩み事情

第2章 追想

改めて見渡すと、本当に酷い惨状だ。部屋全体が真っ赤に染まっている。窓があるので明るい日の光が入って、よりくっきり見えた。


少女は俺に背中を向け、どこかをぼうっと見つめていた。



「・・・・・もっと・・・強ければ・・・」

独り言のように彼女はそう言うと、うつ向いて動きをとめた。

ぽたぽたと、滴が絨毯に落ちた。赤い染みと混じって、滴も赤く染まった。

声をかけようとして、口をつぐんだ。

何を言うつもりだ。何も言えないのに。『落ち込むな』?『帰ろう』?『元気出せ』?そんな安っぽい言葉で両親が奪われた苦しみを消せるはずない。


「私は弱いの・・・男の子じゃないから・・・・・強ければ、守れたのに」

「もっと知識があれば・・・真面目に勉強していれば・・・・」



独り言を切り裂くように、俺は彼女に言った。


「なら・・・強くなればいい」

少女は俺のほうを振り返った。
逆光で表情は見えなかった。

「今から努力して、強くなって賢くなって・・・・お前自身の守りたいものを、守ればいい」


少女に近づいて、手を伸ばした。



「俺と強くなろう、イアラ」

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