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メガネは外さないで

第2章 4月下旬

放課後


「…っと、はい、先生。これで終わりました。」

「はい。どうもありがとうございました。」



佳菜子は、明日の授業で使う資料を、永山と作っていた。

普段なら数学準備室には他の学年の先生もいるのだが、今は永山一人しかいなかった。

男の人と2人きりという状況ではあったが、何せ相手は永山である。

特段、緊張もせず作業が出来た。



「はいどうぞ。お疲れ様でした。」


永山は佳菜子に温かいコーヒーを容れてくれた。

永山の容れてくれたコーヒーを見て、佳菜子は少し可笑しかった。




「何か、面白かったですか?」

「だって、先生っていつも白衣にコーヒーの染みがついているでしょ? それ思い出したら可笑しくなっちゃって。」



コロコロと笑う佳菜子を見て、永山の表情が柔らかく微笑んだのがわかった。



「山本さんがそんなに笑っているところ、初めて見ましたよ。」

「そうですか?」

「はい。 とても可愛いです。」



佳菜子は顔が熱くなるのを感じた。
何だかとても恥ずかしくなって、顔をあげられなくなった。



「あ、あ、ごめんなさい。変な意味でいったわけではないんだ。」

「あ、いえ、ちょっと恥ずかしくて…」


「あ、あ、ごめんなさい…」



2回も謝る永山が、急におかしくなった。
佳菜子は爆笑した。


「え、えっと…」

「あははは♪ 先生って他の先生とは違った感じですよね。」

「そうですか?」

「はい。 なんか、生徒みたい。」

「生徒ですか?」

「はい。とても話しやすいです。」

「それはよかった。」








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