
1ぺーじすとーりーず
第7章 月見
(ねぇ、綺麗なあの月を一瞬で消せるならキスぐらいはしてあげる。)
歌が流れていた。
「月なんて…。大嫌いだ。」
着物を着たお前の後ろ姿が何時もより綺麗で、見とれる俺に振り向きざまお前はこう言ったんだ。
その瞳は少し濡れていて。
その声は少し震えていて。
触れたら壊れそうで。
それでも、手を伸ばさずには居られなかったよ。
腕をとってきつく抱き締めた。濡れていく胸元が、愛しい。
「なにすんだよ…。」
お前は声を震わせ流れ強がりを言う。
「月消してみた。」
お前にはこの思いは伝わらない。愛を囁く事は許されない。
でも、今だけは…
お前の側にいさせて。
