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殺シテヤル

第4章 悪戯

「どっか具合でも悪いの?」

紅茶を淹れた母親が戻ってきて、
かのんに手渡しながら隣に座る。
心配そうに顔を覗きこむ。

「だ、大丈夫!!ちょっと貧血起こしちゃったみたい…」

無理矢理、笑顔を作って答える。

「そうなの?鉄分取らなきゃね!!晩ごはんはレバーね!!」

「お母さん安直」

二人は笑いあった。

「ただいまー」

そこへ拓磨が帰ってきた。
大学の講義が朝の一限だけだったのだ。

さすが兄妹と言うべきか。
すらっと伸びた手足と細いながらも筋肉の程よくついた体。
高校時代、文化祭で行われた美男美女コンテストに(クラスの女子が勝手に)エントリーした拓磨は、見事優勝した。
それほど拓磨のルックスは良かった。
外に出掛ければ、逆ナンに合う。
しかし、拓磨に彼女はいない。
本人曰く、暇がないから、らしい。

ソファに座る妹の姿を見て、眉を寄せる。

「おぉ、体調は?」

「あ…大丈夫。ただの貧血だったから…」

「ただの貧血で夜中に公園で倒れられたくないけどな。俺がバイト帰りだから良かったものの…」

口は多少悪いが、拓磨は妹を大切にしている。
根本的には面倒見のいい、優しい兄である。

「お、お兄ちゃん。私、公園のどこで倒れてた?」

「あ?ベンチの前。ベンチに寄りかかるような感じだな。何だよ、覚えてねーの?」

「う、うん…ちょっと朦朧としてて…」

「…本当に大丈夫か?」

心配そうに見詰める兄と母。

「やっぱりまだ気分悪いみたい…少し寝るね…」

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