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殺シテヤル

第4章 悪戯

立ち上がり、居間の出口へ向かう。
兄の横を通りすぎた時、母親が声を掛けた。

「そういえば、雪菜ちゃんが心配してたわ?携帯が繋がらないって家にまで電話くれたんだから。」

「ぁ…電池…切れてて…後でメールするよ」

返事をして、かのんは居間を出た。
階段をあがり、自室へ。
部屋に入ると、明かりもつけずにベッドに倒れこむ。

―――ぁ、雪菜にメール…

ベッドの横にあった鞄を引き寄せ、中を探る。
淡いピンクの携帯を取りだし、充電を開始した。
電源を入れて起動するまでの間、何げなく鞄の中を確認する。
夕べの事が現実なら、盗難にもあってるかもしれない…そう思った。

「…?」

異常はない。
いや、ないと思った。
財布もあるし、中身もちゃんと入っている。
無くなった物はない。

が、増えていた。
荷物が1つ。


見覚えのない、緑の携帯電話。


(間違って入れる?普通有り得ないよね…?)

二つ折の携帯を取り出してひらいてみる。
待受は買ったままのデフォルト画像。
画面はこれまた買ったままの防護シールが貼られている。
真新しい携帯。
無論、かのんに買った覚えはない。

不気味に感じながらも、
携帯をいじる手は止まらない。
メニュー画面を開き、アドレス帳をひらく。

「何これ…」

アドレス帳には、たった一件、登録されていた。

登録名は《殺し屋D 》

物騒な名前だ。
ますます不気味に思う。
電話番号とメールアドレスがあった。
メールアドレスは適当なアルファベットと数字の羅列。

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