あいどる君に恋煩い
第7章 訪問客
「あっ、すみませんっ」
「ぐぁっっ!…痛ぇーな!骨折れたじゃねぇーか!」
「えっ」
私がぶつかってしまった相手は地元で有名なヤクザの一味だったようだ。
「おいっ、どーしてくれんだよっ⁈ 慰謝料請求してやろーかっ⁈」
「ほ、本当にすみませんっ! だから、あのっ…」
私は涙目になりながら周りを見た。
でも周りの人達はみんな見て見ないふりで足早に通り過ぎて行く。
「お、お金なんて払えませんし… それに今ので骨折なんてするはず…」
「ないって言いてぇのかっ⁈ あっ⁈ お嬢ちゃん、自分からぶつかっておいてそりゃねぇだろっ⁇」
そういってヤクザは私との距離をどんどん詰める。
「あ、あのっ…」
「…お嬢ちゃんよく見るとイイ身体してんじゃねぇーか。べっぴんさんだし… じゃあ金は無しにしてやるよ……その代わり…」
男は舐めるように私をイヤラシイ目で見ながら手を伸ばして来た。
や、やばい…
頭では分かっていても恐怖で身動きができない。
男の手が私の腕を掴んだその時…
「おい、俺の女に何手ぇ出してんだよ……」
ドスの効いた声が聞こえたと思った瞬間、私の目の前の男は後ろへ吹っ飛んでいた。