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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

 行列は次第に近づき、やがて「ゆめや」の前に差しかかった。人々はいっそう頭を地面にこすりつける。いよいよ行列が眼の前を通り過ぎようとしたその時、白馬の武将が何か言いつけたらしく、行列が止まった。と、唐突に小文の頭上から声が降ってきた。
「名は何と申す」
 小文が思いもかけない成り行きに弾かれたように面を上げた。先刻先触れに立った男が再び現れ、小文に近づいた。
「関白殿下がそなたの名前をお訊ねになっておられる」
 小文は、じっとりと額が汗ばむのを感じた。

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