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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

「『ゆめや』とは、そちの店か」
 全く別のことを言った秀吉を、小文は眼を見開いて見つめ返す。
「はい」
 問われるままに頷くと、秀吉はまた薄く笑った。
「若いのに、殊勝なことだ。せいぜい商いに励むが良い」
 秀吉は低い声で言うと、傍らに跪いていた伴(とも)の男―先触れを告げた武士―に軽く頷いて見せた。伴の者が恭しく頭を下げ、行列に向かってひと声叫ぶと、刹那、止まっていた行列が再び動き出した。

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