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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

 去ってゆく行列を小文は平伏して見送った。行列が完全に見えなくなると、途端に辺りの空気が一瞬にしてやわらいだ。漲っていた緊張が解け、人々は立ち上がり思い思いに動き始めた。大路にはまた大勢の人が行き交い、以前の喧噪を取り戻した。
 止まっていた時間が動き出したような感じだ。小文もまた立ち上がり、背伸びするような恰好で深呼吸した。
 一体、いかほどの刻が経ったのだろうか。随分と長い間のような気もするけれど、実際にはほんのわずかに相違ない。  
 やはり、天下統一を成し遂げ、長く続いた戦国の世を平定しただけのことはある、豊臣秀吉は凄まじいまでの威圧感を持った男であった。秀吉はあの瞳に何を映し、何を思って乱世を生き抜き、これまでの数奇な人生を生きてきたのであろうか。

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