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歪みの世界

第2章 失踪

兄貴が居なくなった。と言うよりも“三国唐真”と言う存在が消えた。
兄貴のアパートに戻ると、部屋の中は空っぽだった。
隣の部屋のおばさんに兄貴の事を聞いたら、知らないと言われた。
慌てて俺は、実家に戻った。
母親に聞いてみたら、笑って居ないと言われた。
夢でも見てたんじゃないの何て言われ、俺は実家からも出ていた。
「兄貴…何処行ったんだよ」
不安で気持ちが動揺している。
走っている所為か息をするのが辛い。俺は何処に向かって走っているのかが分からない。
ただ、走っていれば兄貴に会える気がしたからだ。
今朝、友達と遊びになんか行くんじゃなかった。
兄貴と一緒に居たら、こんな事にならなかったかもしれない。
「はぁ…はぁ、兄貴」
気付けば、公園に足が向かっていた。
辺りは誰も居らず、今の俺には丁度良い。
ベンチに座り、遊具を見渡した。
此処には兄貴との思い出が沢山ある。
目を閉じれば、幼い頃の俺達が笑いながら遊んでいる様子が浮かぶ。
あの頃は、兄貴の後を一生懸命に追い掛けていた。そんな俺を兄貴は優しく手を繋いでくれた。
繋いだ手は今でも覚えている。暖かくて、優しいかった。

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