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歪みの世界

第1章 プロローグ

智貴は納得した様なしない様な曖昧な返事で返された。
「それじゃあ、食べようか」
「そうだね」
「「頂きます」」
智貴は美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある。
「どうした、兄貴?」
「いや、美味しそうに食べてくれてるなって」
「美味しいからに決まってるだろ」
ニッと笑う智貴に俺は嬉しく感じた。
食べ終えて、俺は食器を洗おうとしたら智貴が洗うと聞かないから代わりに洗って貰った。
序でに、柚子風味ゼリーも頼んだ。
戻ってきた智貴に俺は労いの言葉をかけた。
「んー…、美味い!!」
我ながら美味しいと思う。柚子の爽やかな酸味と甘さ絶妙だ。
「兄貴は今日どうすんの?」
「取りあえず、スーパー行ったり本屋で立読みかな」
「…そ、そうか」
何だか変に気まずい空気が流れる。
「ちょっ、一寸待て。別に、友達が居ないとかじゃ無いからな」
「分かってるよ。兄貴の友達なら此処に来れば会ってるし」
慌てる俺を見て、智貴は楽しそうに笑う。
からかわれた。
「そう言う、お前は何だよ。彼女か?」
「彼女居ないし。それに……兄貴が居れば他なんていらない」
彼女居ないしの後は何て言ったかは殆ど聞こえなかった。

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