真っ赤な家庭
第5章 松本 圍
銀座にある最高級と言われている会員制グラブ"マルジェラ"へ行った。
ボーイと呼ばれる男に重たい扉を開けてもらい派手な内装の始まりの入り口に入った途端に
「いらっしゃいませっ!」
新人と思われる若いホステスが声をかけてきた。
「あー、ごめんね。
ママいないかな?」
「エリカママなら今接客中なので、こちらで御待ち下さいね。」
席へ案内してくれた。
一先ず、座ってゆっくりしていると向こうから
「あー!
松本さん、今晩は!ママねー、直ぐ呼んでくるわ。」
新人の女の子がどうしたら良いのか分からなかったのか、ベテランのくるみを呼んで来たみたいだ。
「くるみちゃん、今晩は。ありがとう、慌てて無いから大丈夫だよ!」
「大丈夫、大丈夫っ!ママも喜ぶから。」
蔓延の笑みで水と灰皿とおしぼりを置いて行ってしまった。
不景気だというのにゴージャス過ぎる店内は全く関係ないように盛り上がっていた。
異次元だ。
自分はここの人間とは本当に身分違いだ。
水を一口飲んでいたら、
「今晩は。
松本さん、御待たせ。今日は何だか疲れた顔してるわね、大丈夫?」
綺麗にセットされた黒髪に豪華な黒い着物に金の帯を締め、華やかな出で立ちでこの店の大御所が登場して来た。
「相変わらず、今日も賑わってるね。大丈夫って、言いたいが今日は流石に疲れたよ。」
「じゃあ、ここでは何でしょ?家でゆっくり話から待ってて。」
と言いながらテーブルの下から部屋の鍵をもらってママの家で待つことにして店を後にした。