とある隠れ変態の物語
第6章 エンジェル羽恋と初デート
「やぁ、真田くん」
久しぶりだね。
ひょいと手を上げて笑顔を作る彼の姿が目の前にあった。
一息ついて、視線を落とした瞬間にすっと現れた彼。
相変わらず身のこなしが身軽すぎる。
「じっとして、喋らないで。オレの言う事にただ頷いて」
声は出さず吐息で伝える。
「……久しぶり。何か用かな」
腕の力を抜いていたけれど再びこめる。自分の声がどこか低いのを感じつつ、笑顔は崩さない。
そんなオレにびっくりしたらしく、羽恋が目を見開いて視線を合わせてくる。
大丈夫だよ、心配しないで。
囁くと、分かった。分かったけどくすぐったいぞ。
そんな返答に癒された。
羽恋は耳が弱いらしい。覚えておこう。ふわふわの髪を撫でて抱きしめなおすと不安そうな表情も無くなった。
「別に、用って程ではないけど。そんな言い方しなくてもいいじゃないか?」
「用が無いならわざわざ声かけなくても良いよ。オレは大事な恋人といちゃいちゃするので忙しいから」
再びびっくりしたらしくてもぞもぞしだして、またもや真っ赤だけど可愛いからよし。
「そうそう、僕が声かけたのはその恋人さんが気になったからなんだよ」
せっかく癒されてたのに、その言葉で一気に冷めていく。
どうしよう、ばれてたら。
大丈夫、きっとばれやしない。
それだけが頭をぐるぐる巡りゆく。