とある隠れ変態の物語
第1章 子猫ちゃん拾いました。
――真田家
「ありがとうございます」
「いいえ。寒いよね?タオル持ってくるから」
着くやいなやぺこりと頭を下げる子猫ちゃん。
何て礼儀正しいんだよし後でなでなでしてあげよう。
タオルタオル、っと。
洗面所のオレンジ色の棚をあさくって目的の物発見 。
いざ、少年の元へ。いざ、少年の元へと下心を頑 張って隠してタオルを渡すと、こてんと首を傾げられる。
「何でここまでしてくれるんですか?」
ああそれか。
「だってあんな雨の中にいたら風邪ひいちゃうでしょ?オレ一人暮らしだから遠慮しなくて良いよ」
だってこれはチャンスでしょ?
可愛い子猫ちゃんがずぶ濡れになってたら理屈こねて持って帰って来なきゃ。オレ一人暮らしだから遠慮なんて必要無いし 。えへへ。
「お兄さん優しいんですね。助かりました」
「いえいえ。気にしないで」
いえいえ。下心満載ですから。
「侑里 」
「え?」
「オレの名前です。君じゃなくて名前で呼ばれたいので」
おおおそれはそれは。
呼んで下さいじゃなくて呼ばれたいのでときたか。 何て可愛い思考回路してるんだ。
そして初対面のオレに名前を教えてくれるとは。何て無防備なんだ、 是非とも襲わせて頂きたい。
「うん分かった侑里くん。オレは尚輝 って呼んで?」
「尚輝……お兄ちゃん?」
こてん、と再び首を傾げる侑里くん。 うわぁぁあ不意打ち不意打ち!!何々どうしよう! ?
お兄ちゃん?お兄さんじゃなくてお兄ちゃん?! 大事な事だからもう一回言うよ、お兄ちゃん?!
「そう。宜しくね」
「宜しくお願いします、尚輝お兄ちゃん」
やはり笑いはしないけれど、少しだけ、少しだけ表情がやわらかくなった気がした。