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サンタの足音

第3章 第三章

人は楽観的に考えられる生き物だ。それが例え恐怖を催す環境でも。

「きっと、やる気ない掃除婦の人がシーツでも引きずってるんじゃない?」

そう冗談めかして言う私の声も、弱々しいものだった。だいたい、汚れたシーツはキャスターの付いた大きなカゴで回収するのが一般的じゃないか。

ズズズゥ…ズズゥ…

私たちは、その引きずる物音が自分たちの部屋の前を通るのを聞いた。思わず息を飲んだが、すんなりと通り過ぎていく。

「ちょっと、そと覗いてみる…」

私の「ちょっと」は悪いことを招くことが多い。彼女もそれを知っているから、無言で激しく首を横に振りながら、反対の意を示した。あまりに必死だったのと、私自身もやはり気味が悪かったので、思い止まることにした。

そうして奇妙な五分間が過ぎ、物音も消えた。さらにしばらくして電気が元通り点いた。二人は帰り支度をすると言葉少なに私の実家へ帰った。

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