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まさぐる手

第4章 真相編 一

朝一番に上司に連絡し、「体調がすぐれず、今日一日休ませて欲しい」と願いを出した。幸い担当していた案件が一段落していたことと、昨日の私の相当疲れた様子を、その上司は気にしていたこともあり、すんなり休むことが出来た。

私はいつもより早い朝飯を済ませると、Sという寺へ訪問を事前に知らせようと電話をかけた。手短に前の晩の出来事を住職に伝えると、彼は「では来て下さい」と言ったが、その声は何処か沈んだ調子であった。

その電話の最中、本当に微かな声で「…いいきみ…」と聞こえたようだった。けれど、はっきり聞こえたわけでもなく、昼間で明るかったことも手伝ってか、特に気にも止めず出発の準備をして出掛けた。少し迷ったが、例の鏡も布で包んで持って行った。

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