テキストサイズ

まさぐる手

第6章 告白編 一

その当時から、さらに五年前の出来事であった。住職には娘があったが、それは再婚相手の妻の娘であり、彼とは血の繋がりはなかった。

若葉が萌ゆる春、娘は一人暮らしをすると言い出した。彼ら家族三人は、バツイチ同士の再婚、そして子供連れではあったが円満に暮らしており、不満によって思い立った希望ではなかったものの、住職ら夫婦は少し戸惑った。

けれど、前向きに熱心に主張する娘に、最後は根負けし「まずは近くのアパートで」という条件で承諾することにした。娘も一つ「頻繁に見に来ないこと」を夫婦に約束させた。

そうと決まればと、娘は一週間で荷物をまとめ、さっそく一人暮らしを始めた。近所に住んでいても、一ヶ月も経つと夫婦は心配で仕方がない。

引越し以来行ってないのだし良いだろうと、まずは住職だけが娘のアパートへ向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ