記憶のカケラ
第7章 別れと…
偶然にも女の人が探している場所は俺たちの家のすぐ近くだった。
自転車に荷物をのせて、歩きながら道を進む。
「わざわざごめんなさいね。初めてきたものだから全然わからなくて困ってたの。ありがとう。」
と、女の人は申し訳なさそうに微笑んだ。
「いえいえ、私達これからちょうど帰るところだったんです。すぐ近くだから遠回りにもならないし、気にしないでください。」
そう言って亜梨紗も微笑む。
「あ、私は亜梨紗っていいます。こっちは遼。」
亜梨紗の思い出したような自己紹介に笑ったが、俺は軽く頭を下げた。
「私は平野 咲菜絵(さなえ)っていいます。」
そういって笑った顔はどことなく誰かに似ていた。
それから俺たちは自転車で15分ほどの距離を歩いたので、30分ほどかかったはずだったけど、
初めてあったはずの咲菜絵さんは話しやすくて苦痛もなく、気づいた頃にはすっかり馴染んでいた。
初めてあった気がしなかった。
ふと、
あぁ、なんとなくおばさんに雰囲気が似ているからかな…なんて考えた。