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記憶のカケラ

第3章 勇気


帰りはいつもと同じ2人乗り。
いつもと同じように緊張して…。

「もうすぐさ、高校生だな。今年は何人島に残ってるかな。」

急に遼が口を開いてそんなことを言った。
毎年先輩から聞くのはみんな島から出てしまうから寂しいなんて言葉。
島には中学は3つ、高校は1つしかない。
だから島を出て高校にいく人も少なくはない。
実際に仲のいい先輩も島を出て行った。

「みんないてくれるといいね。遼は島の高校行くよね…?」

「あーうん多分。」

遼の曖昧な言葉に一気に不安が募る。
私達はわりと成績的に上位にいるから、島を出て頭のいい学校へいけ、何て言われることもあった。
まさか…ほんとに島を出たりしないよね?
心の中では不安だけが膨らんでいく。

「島からでたりしないよね?私のそばからいなくなっちゃわないよね?」

上手く声が出なくて言葉がかすれる。
目にはうっすら涙が溜まる。
ばかだなぁ、私。
離れるかもしれないって感じたときにこんなにも離れたくないって思う。
もう遅いかもしれないのに…。

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