記憶のカケラ
第5章 非日常
母さんが青ざめた顔して部屋に戻ってきた。
「…母さん?」
「…おばさん?」
俺達二人はほぼ同時に母さんに呼び掛ける。
母さんは立つのもやっとこって感じで壁に寄り掛かっている。
それから杏奈がばたばたと階段を上って俺の部屋に来た。
「亜梨紗っ!!」
そういって布団から軽く起き上がった亜梨紗の手を握りしめた。
「…いい?落ち着いて聞くのよ。」
「…杏ちゃん?」
「…杏奈?」
杏奈の態度に俺も亜梨紗も戸惑うだけだった。
「…っあなたのお父さんとお母さんが…海で遭難してしまった…っ。」
杏奈は言いながら泣いていた。