記憶のカケラ
第5章 非日常
「…ええ。岸に繋がる浮輪とロープをその人達に渡せたからなんとか。でもそのあと波に…ぅっ。」
杏奈は言葉にならない声を出した。
亜梨紗は泣いていなかった。
「捜索隊はでてないんですか?」
「でたわ。でもまだ…見つかってないの。それに危険だから夜になったら一回中断してまた明日の朝からだって。」
今は夕方6時。
9月っていったって普段でさえ日が沈み始める時間だ。
加えて悪天候の日だからそろそろ中断されている可能性があった。
「…そうですか。わかりました。…少しだけ一人にさせてください。遼部屋と布団ありがとう。」
そういって布団を出ようとする。
その亜梨紗を止めた。
「俺達が出てく。だからここにいてくれ。」
それから亜梨紗が何かを言う前に
「いくぞ母さん。ほら杏奈も。」
といって母さんに肩をかしながら部屋を出た。
「ちょっ、ちょっと遼っ!!」
そういいがらも杏奈も部屋を出た。