記憶のカケラ
第6章 悲しみ
病室の前に立ったとき、足が地面にくっついたかのように動かなくなった。
膝はガクガクと震えている。
もうどうしようもなく動けなくて固まってしまったときに、
おじさんとおばさんがぽん、と肩に手を置いてくれた。
遼と杏ちゃんが手を握ってくれた。
「…入ります。」
静かに扉を開ける。
扉はカラカラと静かに音をたててあいた。
扉の中には白衣を着た男の医者が一人
奥に横たわったお父さんとお母さんがいた。
私はそっと二人に近づいた。
二人のちょうど真ん中にたって両親の手を握りしめた。
二人の手は冷たかった。
「…お父さん…お母さん…。」