記憶のカケラ
第6章 悲しみ
少し微笑んでいた幸さんは一変して表情を変えた。
「実は私、生まれてすぐに母が亡くなったので『お母さん』っていうのが何となくしかわからないんです。
それに先日病気で父も亡くしていてほんとに寂しかった。
そんなときにあなたのお母様達に会ってうれしく感じたんだと思います。
私にも2人がいたらこんな感じだったのかなぁって。
そう思っていたのにこんなことに…。ほんとにごめんなさい…」
幸さんは苦しそうに…眉を下げた。
「さっきもいったけどこれは事故ですよ。」
私の言葉に幸さんは首を振った。
「さっきの話…お二人にも話したんです。そうしたらお母様が『こんなものしかないけど』ってこれを…」
そういって幸さんが見せてくれたものは青いガラスと小さな貝殻でできたピアスだった。
「『今まで辛いこともあったでしょう。でもきっとこれからはそれ以上の楽しいことが待ってるわ。幸せだと感じられたらそれ渡しに来てね。それまでのお守りに』そういって渡してくださったんです。」
幸さんは泣いていた。