エロマッサージ
第3章 第三章
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カランカラン、と店のドアを押し開ける。
「こんにちは……」
ぽつりと呟くようにして話し掛けると、高坂さんは今日も刺繍作業をしていたようで。器用に動くその手を止める。
「こんにちは、安藤様」
ふわ、と馨る紅茶の香り。目が眩むように、何かが呑み込まれるように、徐々に身体を侵食して行く香り。
「……本日は、紅茶を用意してあります。マッサージ前に、如何でしょう?」
「あ…っじゃあ、頂きます」
店のドアの前に立ったまま緊張している私を、カウンターに促す高坂さん。
私が座ったのを確認すると、コポコポと紅茶を淹れる。
「どうぞ。なんの紅茶か、わかりますかねぇ…」
そうぼやきながら、ニコニコとまるで少年のような笑みを浮かべる。その表情は初めて見るもので、また動悸が激しくなる。
かちゃ、とカップを持ち上げ、馨りを堪能したのち口に含む。
(…これは……アールグレイ…? に、似てる……けど、なにかが違うような………少し、甘い……)
「…あの、高坂さん」
「はい?」
「お砂糖とか…入ってます?」
「…? いえ、一つもいれていませんよ」
「そ、そうですか……」