エロマッサージ
第1章 第一章
「あ、あの…予約とかしてないんですけど…」
遠慮がちにそう言うと、にこっと口角をあげ、成人者と言えど青年のような笑顔を見せる店員さん。
私が入ってくるまでしていた刺繍をやめ、からだをこちらへ向ける。
「どうぞ、この椅子へお掛けになってください」
ふわり、と香る紅茶の馨り。
その馨りに翻弄されるように、促された椅子へ向かう。
「当店へのご来店は初めてでしょうか?」
「は、はい……初めてです」
「そうですか。では、簡単な説明だけさせて頂きますね」
店員さんは、決して私から視線を逸らさない。
バーにあるような細長いテーブルを挟んだだけの、一対一の会話。
「当店は【Torte】という名前で運営しております、マッサージ店でございます。
先程お客様が仰ったように、予約制ではありませんが、ご予約された方が混まない時にご来店頂けます。
もっとも今日は午前のお客様が多く、今は暇を持て余しておりましたので、このような時間もないわけではありません。」
店員さんは、つらつらと言葉を並べて行く。
店の開閉店時間、予約のこと、どのようなマッサージを専門にしているのか…など、様々な説明を私にする。
なのに私は、その言葉が一切耳に入ってこない。