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三日月の夜に

第3章 疑惑

翌日、花織は荷物をまとめて出て行った。

しばらく実家に帰るそうだ。


いつもそうなのだ。

ちょっと都合が悪くなるとすぐに実家に帰る。

星夜が何も悪くなくても、星夜が迎えに行って謝るまで帰ってこない。


迎えに行く気には、なれなかった。

このまま会わない方が、いいのかもしれない。


その夜、星夜は外に出てみた。

ルナを探しに行きたかったのもあるが、またあの女性に会えるのではないかと少し期待していた。

家のまわりを、一周してみる。


すると、門の前に、あの女性が立っていた。


星夜を見ている。


間違いない。彼女はこのうちに、用があるんだ。

「あ……君………昨日も会ったね?」

星夜は自分でもびっくりする程積極的に話しかけていた。


彼女は、うなづいた。

が、何も言わない。


「僕に、何か用事でも?」

彼女は、一歩、また一歩と星夜に近付いた。

「一晩だけ、泊めて下さい…」


彼女は子猫のような愛らしい声で言った。

まるで吸い込まれそうなミステリアスな瞳。

星夜は何も考えられなくなった。

言われるままに、女性をうちへ招き入れた。

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