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三日月の夜に

第3章 疑惑

星夜は、まるで催眠にかかったかのように彼女に従うしかなかった。

言われるままに部屋にとどまり、ベッドに腰をおろした。


胸は、痛い程にたかなっている。


彼女に触れたい。


しかし、触れたら消えてしまうような気がした。


いつのまにか、彼女が隣に座っていた。

あの目だ…。

まぁるくて大きくて潤んでいて、満月のように澄んでいる純粋な瞳。


どこかで、見たことがあるような瞳。


「どこかで、会ったことがありましたか?」

星夜は思いきって聞いてみた。

彼女は微笑んだ。

「ええ。わたしはずっと、あなただけを見ていました。」


彼女はそう言って、星夜の胸に頬をくっつけた。

星夜は何も考えられず、動けなくなった。

まるで、金縛りにあったように、心も身体もしびれていた。

ただ、彼女のあたたかさだけを感じていた。

不思議と懐かしいあたたかさを。

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