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三日月の夜に

第5章 確信

「ずっと、言おうと思ってたことがあるんだ。」


先に口をひらいたのは、星夜の方だった。


花織は不安げな表情で何かを言おうとしていた。


星夜は少し微笑んで続けた。


「ごめん。他に、好きな人ができた………」

花織が、目を見開いた。


自分の不貞についての話し合いだと思っていたのに、まさかこんな告白をされるなんて。


「彼女はどこの誰かもわからないし、名前も知らない。一晩だけあらわれて、消えてしまうんだ。もしかしたら、幻覚なのかもしれない。だけど、僕の心は彼女のことしか考えられないんだ。」

花織は、淡々と話す星夜に何も言えなかった。

作り話だ。

きっと、花織を傷つけないように、こんな下手な作り話をするんだ。

この人に、そんな相手がいるわけがない。

花織は、どこかそう思っていた。

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