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三日月の夜に

第5章 確信

ついに、花織がこのうちにやってくる最終日になった。


家具を業者に運び出してもらって、おしまいだ。


作業の間、ルナは特に怖がることもなく、いつもと同じようにお気に入りのソファで丸くなっていた。


家具のほとんどが運び出されると、このうちは思っていたよりもずっと広く感じた。


「また………遊びにきても、いいわよね?」

花織が室内を見回してたずねた。


「もちろん。ここは君の実家みたいなものだしね。でも、新しい亭主は気に入らないかもしれないな。」


「こっそり来るわよ。それより、あなたに新しい女ができたら、とっても嫌がるかもね」

花織はクスクス笑いながら言った。


夫婦だった頃よりも、安定した関係がそこにあるように思えた。家族のような。


花織は最後に、ルナをなでた。

「星夜のこと、よろしくね」

ルナは、不思議な目で花織を見つめた。

普段あまり感情を出さないルナだったが、どことなく悲しそうだった。


「それじゃあ、さよなら」

「必ず…………幸せになれよ」


花織は笑顔で、出て行った。

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