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三日月の夜に

第1章 猫がきた。

満月に近い、まぁるい明るい月の夜だった。


この辺りは、あまり交通量が多くないのだが、今夜は月にみとれていると、トラックの音が聞こえてはっとした。

自分の後ろからトラックが一台近付いていた。


ライトに照らされて、道路の真ん中に何かが見えた。


あれは、あの白いものは、何だ?

かたまりのような白いもの…………


このままでは、あれはトラックにひかれて……………



星夜は咄嗟に駆け出した。

その間、心臓が止まっていたような気がする。


こんなにも必死で、命がけで行動したことはないくらいに、星夜は走った。


その白いものが、生きた猫だと気付いたのだ。


星夜はうずくまって猫を抱き抱えた。

が、もうそれ以上何も考えられなかった。


逃げられない。


猫と一緒に、ひかれてしまうんだ……………。

今まで自分以外の何にも一生懸命になれなかったような気がする。


それなのに、知らない猫を助けようとして、死ぬのか。

最後の瞬間に自分は、変わることができたんだ。

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