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三日月の夜に

第1章 猫がきた。

星夜は、固く目をとじ、ただただ腕の中のあたたかくやわらかい猫だけを感じていた。


備えていた衝撃は、なかった。


「お前、バカじゃないのか!気をつけろ!」


トラックは、直前で止まっていた。


運転手は怒鳴り付けると、二人をよけて走って行った。


心臓が、動きを取り戻した。


星夜はやわらかくあたたかい猫を抱きしめたまま、道路にすわりこんで震えていた。


何が起きたというのか。


自分は一体何をしたのか。


猫の存在感だけが、現実に感じられた。

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