
妄想でいず、暴走中。
第1章 妄想でいず、紛失。
ない。そこにあるはずのノートが。
絶対に人に見られてはいけないノートが。
(ど、どうしよう…)
冷や汗が額を伝う。
「日向さん?」
「はわぁっ!?」
真後ろから声をかけられ、びくっと肩を揺らす。
振り向くと、にっこり笑う矢浪くん。
と、その手には私の探していたノート。私のノート!?
「ややや、矢浪くん…?」
「探し物は、これだよね?」
(どうしよう、中身、見られた…!?)
あまりの自体に、一瞬頭がくらっとする。
「ごめんね?今日の帰り、席替えのくじ、ひいたでしょ?」
矢浪君は笑顔を崩さず話す。
なんだかその笑顔が今は不気味で仕方がない。
「で、明日の朝から新しい席になる。だから、机の中に前の席の人の忘れ物がないかチェックしてたんだ。」
確かに矢浪君は学級委員だ。
教室に残っていたのも頷ける。
問題は、その中身を見られたか。
何も喋れないで居ると、矢浪君はいっそう笑みを濃くしてこう言った。
「日向さんみたいに、まずいものを机の中に忘れて、それを他の人にみられたりしたら、その人が可愛そうでしょ?矢浪さん、このノートをみつけたのが俺でよかったね?」
………大変なことになった。
