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壊れた御守り

第11章 夢と現実



“ここには来るな”



頭の中で冷たく響く。




状況を整理できずに動揺を隠せなかった。



「なん…でだよ」




「君はそんなこともわかんない?」



北條の言葉に俺は唇を噛み締めた。



何だよ。
なんなんだよ。



俺はここには来ちゃいけないのか?



何で?




「君さ、麻美ちゃんと何を約束したの?」




「約束…?」





「昨日麻美ちゃんに、心臓移植の話をしたんだ」




“心臓移植”




心臓病を治す一つの手段。



それと俺との約束が関係してんのか?



「麻美ちゃん、移植手術を拒否したんだ」



「え…?」





「君との約束がある。私はまだ死ねないんです。
彼女、そう言ったよ」



麻美…。


なんで?


移植すれば、元気になれるんじゃないのかよ。




「心臓移植には、リスクがある」



「リスク…?」




「成功率が低いことだ。それに加え、彼女はまだ高校生。体も丈夫じゃないからそのリスクが高い」



成功率が低い。




それってつまり…





その手術で失敗したら




死ぬかもしれないってこと…?






だから、だから麻美は断った?






「彼女を思うなら、そんな約束なかったことにして、彼女の前から消えろ」








「君は、彼女を知らぬ間に苦しめてる」











俺が、麻美を?












俺が、








俺の約束が















麻美に、一縷の希望を手放させた?












「一体君は、彼女にどんな約束をした?」










「俺は…」












「医者になるからって…言った」








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