壊れた御守り
第12章 土下座
早いもので、もう季節は冬を迎えていて
俺らは修学旅行に来ていた。
担任から聞いた話だと、麻美も来ているらしかった。
だけど俺は、班も一緒じゃなければ
麻美の姿を見つければその場所を避けるようになっていた。
せっかくの修学旅行。
なのに俺は、クラスに馴染めもせず
麻美と一緒にいることすらしなかった。
「おっ。小南。最近調子どうだ?」
担任と、自由行動の時間にばったり会った。
「どうって…別にいつも通りだけど」
「そうか?浅野と一緒にいなくなったから喧嘩でもしたかと思ってね」
喧嘩じゃねぇよ。
ただ…
俺は唇を噛み締めて目を伏せた。
「あいつ、元気?」
「あぁ。今のところはな」
「そか…。良かった…」
元気なんだ。
そっか。
修学旅行、来られて良かったよな。
あいつ、誰といんだろ…
前言ってた理美たちと一緒なんだろうか
健太と一緒だったりして…。
麻美は、俺が急にいなくなったこと
どう思ってるんだろう…。
どう思われようが、俺は麻美の前に現れちゃいけないんだ。
そう言えば、麻美は心臓移植手術を受け入れたのかな?
気付くと麻美のことで頭がいっぱいで
俺は悪態をついた。
情けねぇ。
全然だめじゃん。
修学旅行っていう特別な時間だからこそ
あいつが気になって、しょうがなかった。
とにかく、
あいつがこの修学旅行を無事に終えることが出来ますように。
そう思って俺は御守りを握りしめた。