壊れた御守り
第13章 殴られた痛み
口が切れて、少し血の味がした。
俺が地面に倒れたまま、健太を睨みつけると
健太は怒りの目を俺に向けていた。
「なんだそれ。お前、今までなんのために浅野のそばにいたんだよ?
うぜぇくらいそばにいたはずなのに、なんで今は離れてんだよ」
それは…
俺が麻美を苦しめるから。
俺が無理をさせてしまうから。
俺がいなくて、麻美が笑ってられるなら…。
「俺は…麻美の隣にいちゃいけない」
「は?」
「俺がそばにいるとあいつ、無理すっから…」
-彼女から離れろ-
-浅野から、離れてくれよ-
北條と、いつかの健太の言葉がリンクする。
それは俺の頭の中で響いて、だんだん膨らんできた。
「俺があいつの前から消えて、それであいつが笑ってられるなら俺はこれでいいんだよ!!」
俺が叫ぶと、健太は眉間に皺を寄せて俺を見た。
「慶太。お前、わかってねぇよ…」
「は?」
ため息をついた健太は地面に倒れたままの俺を掴みあげた。
「お前は浅野のこと、なんもわかってねぇよ!!」
上半身が、地面から少し浮く。
健太の顔が近くにあって
その怒りの籠もった瞳の奥では
悲しそうな光を宿して俺をじっと見据えていた。