壊れた御守り
第13章 殴られた痛み
「……わかった」
健太が、小さく呟いた。
「え…?」
「もう、遅いからな」
「は?何が…」
健太が一瞬、顔を歪めてから口を開いた。
「もう、お前なんかに遠慮もしねぇし、譲ったりなんか絶対しねぇよ?」
何がなんだか訳の分からないままの俺に
健太は顔をぐっと近付けた。
「止めにきても遅ぇからな」
冷たい空気中に、健太の鋭い声が響いた。
健太は俺を放すと、睨むようにじっと俺を見て、
商店街の雑踏の中に消えていった。
-クリスマスの日にさ、浅野を誘った。
告ろうと思ってるんだ-
健太の言葉が頭から離れない。
俺はどうすればいい?
止めなくちゃ。
だけど、
少しでも関わってしまえば
もう二度と
離れられなくなるような気がして…
麻美を壊れてしまうんじゃないかってくらい
抱きしめてやりたくなる気がして…
怖いんだ…。
「麻美…」
クリスマスが近づく。
聖なる夜が。
麻美の誕生日が
近くなる。