壊れた御守り
第14章 Happy birthday
「ねぇ…慶太くん。お願い」
「え…?」
「お願いだから、行かないで?」
大きな瞳に涙を浮かべて、凌華は言う。
俺はどうしていいかわからずに、焦っていた。
なんだよ俺。
こんなん、手を振り払って行けばいいだろ。
簡単なはずなのに、何を躊躇ってる?
2回しか会ってない、初めましてな状態の女の子だろ?
そんなやつと麻美、どっちが大事だ?
考えなくてもわかんだろ…。
なのに…。
「長嶋…。とりあえず落ち着け。ほら、涙拭けよ」
俺の言葉に、何かが崩れたようにボロボロ泣き出した凌華の頬をそっと指で拭った。
だめだな。俺。
泣かれるとどうしていいかわかんなくてつい目が離せなくなる。
俺は凌華を支えて近くのベンチに座らせた。
「飲み物、買ってくるから待ってろな?」
俺がそう言うと、凌華が俺の腕にしがみついた。
「ここにいて…」
「…はぁ。んじゃ、これでいいなら少し飲んで落ち着けよ」
俺はため息をついていつも持ち歩くペットボトルの水を凌華に差し出した。
まだ一口しか飲んでねぇから大丈夫だろ。
凌華はそれを受け取ると、涙を拭いて口に運んだ。
「ありがとう…」
「ん」
水をしまうと、沈黙が襲い、
周りの雑踏が妙に耳に入って仕方なかった。