壊れた御守り
第14章 Happy birthday
ガタンと、
ゆっくり観覧車が動き出した。
外の喧騒が塞がって急に静かになる。
俺たちは座らないでじっと立ち尽くしていた。
「慶ちゃん…?」
麻美の声がした。
久しぶりの、麻美の声がする。
「……体調、大丈夫か?座れよ」
俺は麻美の支えて座らせた。
麻美は黙って座る。
外の景色を覗くと、健太と凌華がいるのが見えた。
それはだんだん小さくなって、
表情が見えなくなっていった。
「どうして…?」
麻美が弱々しく口を開いた。
「どうしてここに…」
顔が見れない。
勝手に変な約束して
勝手にそばにいて
勝手に離れてった俺は
麻美と向き合う資格があるのかさえわかんねぇ。
麻美のその小さな声が俺に突き刺さった。
“離れたくせに、どうして来たの”
そう、言われてる気がした。
「麻美…」
「……慶ちゃん」
「…俺っ!!」
「お帰り。慶ちゃん」
「え…?」
息が詰まりそうだった。
“許さない”
そう言われるより
“嫌い”
そう言われるより
静かに笑った麻美の暖かい声が
何よりも、俺の胸を締め付けた。