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壊れた御守り

第17章 人を助ける手



「お前、さっき言ってくれたじゃん?
“人を助けられる手だ”って」





「慶ちゃん…?」





「だけどさ、この手でいっぱい人を傷つけてきたし、今だって傷つけた…。
自分でもわかんなくなるくらい腹立ってて…」




俺は、麻美が思ってるようなやつじゃないんだよ。




そう、上手く口に出来ないもどかしさに腹立たしく思う。




はっきり言えよ。




勘違いすんなって。



助けてなんかねぇよ。




むしろ傷つけてしまうんだよ。




ずっとそうやって避けられてきた。




なのに、



なのに…っ!!





「慶ちゃん」




「…麻美?」




しばらく黙っていた麻美が




俺に優しく抱きついた。




俺はびっくりして言葉を失う。




そんな俺に、麻美は言うんだ。




「そんなこと言わないで。慶ちゃんは汚れてなんかない。綺麗でかっこよくて、立派な男の子だよ」





麻美が




そう言ってくれるだけで嬉しかった。




そう言われた瞬間、泣きそうになった。




俺はそれを抑えるように麻美を抱き締めた。




「俺…。さっきお前が来て良かった…。
お前が止めてくれてすっげえ安心したよ…」




もし、



もしもあの時麻美が来なかったら、俺の今は違っていたのかもしれない。




そう思うと、体中の力が抜けていく感覚を覚えた。




強く、強く抱きしめると




麻美の鼓動が俺の鼓動と交互になるように



ゆっくり、ゆっくり響いていた。




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