壊れた御守り
第18章 家族
凌華は親をなくしてから独りだった。
親戚もなく、ただ何もせずに独りでいた彼女を救ったのが
遠縁であるおじさんだった。
凌華はそう話し始めた。
「最初の頃は優しかった。凌華ちゃん、凌華ちゃんって呼んでくれたの」
“凌華”
俺には信じられなかった。
あの嫌な響きの声しか思い出せなくて
凌華の言葉は半ば半信半疑で聞いていた。
「“僕のことはお兄ちゃんかお父さんって呼んでもらって構わないよ”おじさんはそう言ったけど、私はとてもそんな風には呼べなかった」
「長嶋、わかった。もういいよ」
「私が呼ばないと、おじさんはどんどん変わっちゃったの。私を叩くようになった…ご飯をくれないときもあった」
「もういいって…」
「学校に行かせてくれないこともあって…それでも私は謝るしかなかった」
想像を絶する真実に、俺は胸が痛んだ。
凌華に、嫌なことを思い出させた?
ほらな。麻美。
やっぱり俺は
人を救う事なんてできやしないんだ。
また、傷つけた。
また…。