壊れた御守り
第18章 家族
「ほら、凌華ちゃん。ココアどうぞ」
母さん?
ほのかに、いつも母さんがいれるココアの甘い匂いがした。
「ありがとうございます…」
凌華もいる。
2人で何やってんだ?
俺は扉に手をかけたままじっとしていた。
「健太くん?だっけ。彼、面白い子ね。凌華ちゃんの幼なじみでしょ?」
「はい。なんか、すみません2人でこんな…」
「いいのよ。慶太、友達のこととか話さないし、家に連れてきたこともないからいじめられてるのかと思ってたのよ」
おい、そんなん言わなくてもいいだろ!!
って突っ込みたくなるのを抑えて聞いていた。
凌華が小さく笑ったのがわかった。
「慶太くんは、とても優しいですね」
「そう?あの子ね、高校入ってすぐの頃までは不良息子でね。しょっちゅう問題起こしてたんだけど」
あぁ。そういえばそうだな。
懐かしいとさえ感じるあの頃だ。
「だけど、その後少しした辺りから、急に大人しくなったのよ」
「それは…。多分、麻美ちゃんと出会ったからだと思います」
凌華がそう答えた。
確かにそうだ。
麻美に会って、喧嘩も少なくなった。
周りのやつらが避けなくなった。
やっぱり、麻美のおかげだと思ったんだ。
「ねぇ、凌華ちゃん」
麻美の話をきいた母さんが静かに口を開く。
「はい」
「うちにおいで」
「え…」
「あの子が言うように、うちにずっといなさい」
母さんが言う。
俺はそれを冷たい廊下で黙って聞いていた。